小説『Cross Ballade』 第3話『前兆』
美しい夜
瞳には星の輝き
今宵はベラノッテ
愛する二人 寄り添えば
夜空にかかる素敵な魔法
天国は今ここに
この美しいベラノッテに
『ベラ・ノッテ(わんわん物語)』



けいおん!×SchoolDays小説第三弾。
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コラボには古くは

『ルパン対ホームズ』

というのもあるけど(そういえば『ルパンダー対ホーモズ』という漫画があったような・・。)、あれは原作ではルパンの相手の名が
『エルロック・ショルメ』
という名前になっていたとか。
英字表記では
HerlockSholmes
となっていて、Sをファーストネームに移動させると、
SherlockHolmes(シャーロック・ホームズ)
となる。

最初はルパンの作者ルブランがホームズをそのまま出し、ホームズの作者コナン・ドイルが抗議した・・
と言われてるんだけど、
実際にその記録は残ってないらしい。
その後は『ルパン対ショルメ』
の名前で出したんだけど、日本ではアナグラムに馴染みがないから、
『ルパン対ホームズ』
にしたらしいよ。



閑話休題。
さて、今回は平沢唯伊藤誠のデート編。
・・なんだけど、やっぱり恋愛やデートの描写って難しいわ。
多少自分の経験を交えたり、実際に一人で喫茶店に行ったりしたんだけどね。
この二人の恋を実らせるかどうかは、まだ考え中。

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第3話 『前兆』

唯の練習ぶりに、弾みがついた。
誠と、話して以来、である。
『俺も、放課後ティータイムの演奏、楽しみにしていますよ。』
その言葉だけが、唯の頭に残り、何でもかでも、滅茶苦茶に練習したくなって、昨日よりは今日、今日よりは明日と、ものすごい加速度をもって、半狂乱のような獅子奮迅を続けた。
部活では、ムギの茶菓子を一口で平らげ、いつものようにだべりもせず、すぐにギターの練習に取りかかる。
それから休まず、水も飲まずに練習を続け、それから帰宅して、食事と入浴を済ませると、すぐにギターをとって、歌と演奏の練習を、深夜まで続けた。
そんなに練習して、死んだように眠って、その翌朝は目覚まし時計が鳴る音と共にはね起き、朝食まで発声練習をした。
もちろん、部員たちはおどろきおののく。
「おいおい、どうしちまったんだよ、唯だけは私の仲間だと思っていたのに・・・。」
いつもは唯と並んで、練習を始める時間の遅い律が、唖然と話しかける。
「何いってんの、ライブも近いじゃない。たまにはしっかりと練習しないと。それに、たまに泊りがけで練習することもあるでしょ?」
唯は朗らかに、笑って答えた。
「唯ちゃん、私はもう少し、ティータイムの時間がほしいけどなあ。」
さわ子もあまり乗り気でない。
「さわちゃんたちはいいよ、マイペースで。私も、マイペースでやってるだけだから。」
「これがマイペースと言えるかや。どう見ても躁状態だろうが・・・。」
律は呆れて、呟くように言う。
「いや、いや、よかったですよ!」梓だけが、大喜びである。「いつもいつも唯先輩、全然練習しないから困ったもんだと思ってたんですよ。やっと真面目になったんですね。」
「ああ、あずにゃん、ひどい! 私だってやる時はやるんですからね!!」
唯は、むくれてみせる。
「冗談ですよ。さ、一緒に練習しましょうか。」
梓は笑って、ギターの調整を始めた。唯もそれを見て、ギターのネジを回す。
不意に肩をたたかれたので、そちらを向くと、澪がけげんそうな表情でいる。
「唯、最近変だぞ。何かあったのか?」
「べつに。ただ、ライブでは悔いのないように、全力で取り組んだほうがいいかと思って。」
あからさまな疑りの視線を向けられ、唯は思わず目をそらして、言った。
「澪先輩、いいじゃないですか。唯先輩があれだけやる気を持ってくれるなんて、初めてじゃないですか。私は嬉しい限りですよ。」
梓が満面の笑顔で、澪をたしなめた。
「・・・まあ、真面目になったのはいいかもしれないが、なんか私は不安でしょうがないんだ。いったい、何があったのやら・・・。」
しかし澪は、不安な思いを隠せなかった。
「さ、唯先輩、合奏の練習しましょうよ。」
「そうだね、あと少し頑張ろう、あずにゃん!」
梓の誘いに、唯は快い表情で答え、大車輪で演奏を始めた。
「ちょ、ちょっと唯先輩! 力みすぎです。トーンダウン、トーンダウン。」

そして、帰宅までの間、必ずコンビニに寄り道をする。
誠に会うためだ。
大体6時頃を目安に行けば、大体誠がいる。
「伊藤くーん!!」
「あ、平沢さん。」
いつも元気よく声をかけると、おだやかな声で、誠は返す。
そしてお互い、笑顔を浮かべる。
たまに世界や泰介と一緒にいたり、コンビニにいなかったりすることもあるが、たいていは一人で、夕飯のおかずを探している。
実際は誠と唯の帰る方向は正反対なのだが、唯はうまくごまかし、誠と行動を共にするようにした。
肩を並べ、誠の向かう榊野学園駅まで一緒に行くのだ。
たわいもない話をしながら。
「そうですか、今年榊野に。」
「はい。まあ、受験前にひいひいしながら勉強したんですけど、運よく合格してね。あははは・・・。」
「でもすごいじゃないですか! 私も一夜づけで勉強しましたし。桜ケ丘がやっとでしたよ・・・。」
もっともっと、誠のことが知りたくて、誠が気付かぬうちに、彼のすぐそばに歩み寄る。もちろん誠は頬を染めて、
「あ、あの・・・人前だから、あまりくっつかないでくれません?」
「いいじゃないですか、伊藤君。たまには。」
「ちょ、ちょっと・・・困るんですけど・・・。」
「困っている伊藤君を見るのも、うれしいです。」


「誠、何ボーッとしてんの?」
世界が怪訝な目で尋ねてくる。学祭の会議が長いためか、少し不機嫌なようだ。
「ううん・・・・・・。なんでもない」
「なんか最近、誠変よ」
「そうか?」
「今頃なら、たぶん食前に私達、しているはずなのに。」
彼の顔がぽんと赤くなってしまう。
というか世界、恥ずかしくないのか。
「な・・・! 恥ずかしいこと言うなよ・・・。別にいいだろ!! いつもそればっかりじゃお互い疲れるからさあ!!」
「まあいいけどね。学校の昼休みでもやりたがる貴方だから、ちょっと気になっただけだけど。」
世界の目が、若干厳しくなる。
無視して誠はシフォンケーキを再び食べ始めた。
そういえば、唯ちゃんと出会ってから、彼女の笑顔を見れたら十分で、最近特にしたいとは思ってないんだよな。
不思議なもんだな。
まあとりあえず、唯と親しくなっていることは知られていないらしい。
彼は軽く、息をついた。


そんな日々が続いた、ある日のことである。
『喫茶店ベラ・ノッテ 
珈琲無料券』
行きつけの喫茶店の割引券である。2枚ある。
朝起きて、机の奥の奥から見つけたのだ。
しかも、期限は今日まで。
しまっている間に忘れてしまったものとみられる。
「あそこの珈琲、とてもおいしいからなあ。マコちゃんも好きになるかなあ…。」
ベージュ色の券を見つめながら、唯は独りごちた。
朝食の席で、もう制服に着替えた憂が、唯に声をかけてきた。
「ねえ、お姉ちゃん、ベラ・ノッテの券って来た?」
自分の行きつけの店だったのだが、妹の憂にも紹介して、しばしば2人で行った店だったのである。
男の人と一緒に飲む。そう答えるのが妙に恥ずかしくて、
「いや、来てないよ。」
と答える。
「そろそろ来るころなんだけどなあ・・・またお姉ちゃんと、あのおしゃれな店で話したいなあ。」
遠い目をする。
心の一部で、罪意識みたいなものがうずきながらも、振り切って家を後にした。


いつものような日常が続いた、午後。
誠は例のコンビニで、漫画を読んでいた。
世界は学祭の話し合い、言葉は委員会活動があり、あいているのは自分だけなのである。
もっとも自分の役割は、学祭近くになって多忙になってくるのだが。
実を言うとあまりここで、油を売る必要もないのだが、あえてここにいる。
あの人が、来るかもしれないから。
「ま・・・伊藤くーん!」
来た。
「またいつもの時間ですね、平沢さん。」
いつものようににっこりほほ笑み、誠は入口にやってきた。
ふと、唯の表情に多少の緊張があることを、彼は悟る。
「あ、あのですね、伊藤君・・・。」唯が、頬を染めてうつむく。「あの・・・とってもおいしい珈琲の無料券があるんですけど・・・今日、一緒、に、どうですか?」
誠は唯が見せた、珈琲無料券を覗き込む。
喫茶店ベラ・ノッテ。
彼は珈琲通というわけではないが、あそこの珈琲は美味だという噂を結構聞いている。
行こう行こうと思いつつ、なかなか行けない場所の1つであった。
「やっぱ・・・だめかなあ。」
唯が残念そうな表情になる。ほんと、彼女は分かりやすい。
「い、いやいや・・・俺もあいているし、大丈夫ですよ。」
唯を傷つけてしまうのが嫌で、誠は気がつくとうなずいていた。彼女はすぐににぱっと笑みを浮かべ、
「よかった! じゃ、さっそく行きましょう。」
「あ、でも、ちょっと・・・人気のない道って、ないかなあ。」
こんなところを世界や言葉に見られてはかなわない。
「そうですねえ、このあたりに細道があるから・・・。」
細道か…いささか恐喝のターゲットにもなりかねないが、まあ他人の目はごまかせるだろう。
唯の案内するまま、誠はついていく。
「あ、あの・・・平沢さん。人前なんですから、あんまりくっつかないでくれません・・・?」
「いいじゃないですか、一緒にお茶するんですし。」
一定の壁を超えると、もはや唯、ためらいがないらしい。きつく誠の腕にしがみついて、顔をすりよせている。
本当に子供っぽい。 
周りの人が2人を見て、ぼそぼそと話しているのを、誠はすこし気にした。


「どうしちまったんだ、唯の奴・・・。」
あごに手を当てながら、澪は帰路につく。
いつもは唯、律と並んでなかなか練習せず、お茶とお菓子を食べながらダラダラしているのに。
あまりにも、変わり過ぎだ。
そう思いながら、桜ケ丘の正門を出て左に行き、目を見張った。
唯が、彼女と同い年程の男子生徒と、肩を並べて大通りを横切っている。
男子生徒の腕を引き寄せて。
「唯・・・。あれは、榊野の・・・・?」
いつの間に唯、彼氏を作ったのか?
それも、榊野の男子生徒と。
「うわあ・・・ちょっと憎いな、唯の奴・・・。」
彼氏の赤らんだ横顔を見ると、なかなかの好青年に見える。
ふと、彼氏を作るために、一生懸命本を読んでいた律の姿が思い浮かぶ。
気になったので、2人を尾行してみることにした。


件の喫茶店は、榊野学園駅東口を出て、すぐ右手にある。
スターバックスやドトールコーヒーよりも高級な飾り付けと、クオリティ高い珈琲豆を仕入れており、一介の学生には手の届きにくい店である。
「はあー、到着うー!」
幼子のような唯の口調。
「俺、ここに来るの初めてですから、ちょっと緊張しますよ・・・。」
誠は少し、ネクタイの位置を調整する。
ドアの鈴の鳴る音とともに、唯と誠は中に入る。
黒いブレザーの店員がゆっくり、深く頭を下げ、2人をテーブルに案内した。
「こちらへどうぞ。」
4人がけの丸テーブルに案内され、誠と唯は向い合せに座った。もちろん荷物は、それぞれとなりの椅子におく。
誠の後ろには、30㎝位はある花瓶があり、さらに奥には黒いグランドピアノ、そして窓がある。これならば、外から見えにくい。
「ここなら大丈夫だな・・・。」
つぶやく誠に、
「どうしたんですか?」
と唯は聞く。
「あ、いや、独り言です。」
唯の後ろ側にはカウンターがあり、壁の棚には、ターコイズ色、エメラルド色のラベルで染まったティーカップ、ピーターラビットの描かれたものなど、様々なティーカップがびっしりと並べられている。
このおしゃれなデザイン、静かな感じ、どれも唯のお気に入りなのである。
ショパンの静かな音楽に耳を傾けながら、唯はにっこりほほ笑む。
誠も、それにつられて笑顔を返した。

何を話してよいものやら。
迷いながら誠は、唯とメニューを覗き込む。
「うわあ、珈琲一杯で1155円・・・。」
「無料券対象だから大丈夫ですよ。それに、値段が張る分だけ珈琲の質が良いということです。」
唯も珈琲通というわけではない。
ただ単に、高いものほど価値がある、そういう考え。
「コロンビアがこの店で一番のお勧めなんですよ。」
「じゃあ、俺もそれで。よく来るんですか、ここ?」
「はい、いつもは妹と来ることが多いんですけど、せっかくだから伊藤君にも教えたいと思って。」
「そっかあ、いいところを知ってるなあ。俺にも妹がいるし、今度連れてこようかな。」
「伊藤君にもいるんですか、妹?」
「ええ。別れた親父に引き取られてるんですけど、どうも俺のほうに懐いていてね。よく家を飛び出してこちらに来るんですよ。
『おにーちゃんのはんばーぐー!』なんて、よく俺の手料理をねだってね。」
誠は笑いながら言った。父のことは、言い出したくなかったが。
「そう・・・ですか・・・。」
唯は、誠が料理できると聞いて驚きつつも、彼の家庭事情を聞いて、少し心を痛めた。
でも料理もできるんだ。
私なんか、妹がいないと料理も洗濯もできないのに。
自分より年下なのにしっかりしている。
それは父がいなくて、いろいろ苦労したからなんだろうなあ。
一方の誠は、唯の表情が曇ったのを見て、しまった、と思った。
なんか話しやすいからつい喋ってしまったが、複雑な家庭事情を誰か(まして異性)に話すなんて、自分も口がちょっと軽すぎる。
話題変えないと、と思っていると、唯のほうから別の話題を持ちかけてきた。
「コロンビアはまろやかでね、コクがあるんですよ。」
あてずっぽう。
「へえ。俺は苦みの強い奴が、コクがあると思ってました。」
素人同士のトンチンカンな会話。思わず苦笑い。
誠は、ちょっと気まずいな、と思い、新しい話題を思いついて、
「話は変わりますけど、平沢さんはいつからギターを習ってるんですか?」
「実は軽音部に入ってからなんです。
最初は軽音を、軽い感じの音楽しかやらないと思って入部したんですけど。口笛とか。
バンドだと知ってあわてたの、昨日のことのように覚えています。
迷いましたよ。その時はカスタネットしかできなかったし・・・。」
いや、カスタネットはともかく、口笛ってどうだろう・・・? 大道芸にはなりそうだけど。
どうもこの子、かなりの天然と思われる。
「でも、ギターを高校1年から始めて、そこからリードギターを務めるまでに成長するなんて、すごいじゃないですか。めっちゃ練習したんですね。」
「そんなことないですよ・・・。」唯は思わず、顔を赤らめた。「部員が5人しかいませんからねえ。」
「5人かあ・・・部員集めがちょっと大変そうだ。」
「本当は伊藤君にも入部してほしいんだけど、違う学校だし、無理だよね。」
「まあ俺、楽器を弾いたことないですし・・・」言いかけてから、冗談半分に話してみた。「あえていうなら、小学校の修学旅行の時に吹いたホラ貝ぐらいかねえ、ははは・・・。もしそれでも良ければ入部したいけど・・・。」
「是非とも入部してほしいです! そしてホラ貝とカスタネットで、ぜひとも合奏したいですね! あははは!」
カラカラ笑って唯は答えた。
「あ、いや、冗談で言ったんだって・・・・。」
いちおう誠も笑い返す。
ホラ貝とカスタネットって合うのかわからないし、そもそもそんな軽音楽があるわけないし、突込みどころが多すぎる。
独特の感性の持ち主なんだな。
でも、心を洗うような笑い声、自分と話すときのキラキラした瞳。
俺のそばにいてほしい。
一瞬そんな思いがよぎり、誠はあわててかき消した。


「ふう、旨かった。」
誠はコロンビアを飲み干し、自分の荷物を取ろうとする。
唯は時計を見た。 1時間しかたっていない。
もう少し、話したい。
「も、もう少し楽しみませんか・・・? ほ、ほら・・ケーキもあるし。 このチーズケーキ、以前妹と食べたんですけど、旨いんですよ。」
「そうですか?」
「そ、それにほら、もうすぐピアノコンサートもあるし。是非とも聴いた方がいいと思いますよ。」
思わず焦ってしまう。
「じゃ・・・じゃあ頼もうかなあ。」
誠は思わずうなずいてしまう。
母の帰りも遅いし、まあいいだろう。
「やった!!」
唯は思わず立ち上がり、机をけり上げる。
カランコロンとティーカップが揺れ、珈琲の残りの分がこぼれる。
「あ、しまった。」
唯が手を出す前に、誠がティッシュでコーヒーを拭いてくれた。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「いえいえ。」
優しく誠は微笑む。
唯もつられて、笑い返す。
やがてピアニストがやって来て、ピアノのコンサートを始めた。

「おお、綺麗な曲・・・」
入口近くのテーブルの席で、ピアノの音に耳を傾けながら澪はつぶやく
この席と、唯と誠の席の間には大きな花瓶があり、お互いに見えにくくなっている。
耳を傾けながらも、少し背伸びをして、唯と誠の様子をのぞき見る。
結構、和気あいあいと話しているようだ・・・。
どちらかというと、唯が自分から話して、誠がニコニコしながら聞いている構図になっている。
まあ、女性って男性よりも口が達者で、話のネタを結構多く作るものだからな。
「唯・・・・。」
ちょっとうらやましく感じた澪である。

コンサートが終わると、もう夜の8時になっていた。
「うわあ、うまかったあ・・・」誠は、冗談半分に行ってみる。「二つの意味でうまかった。」
「くすくす。よかったあ、ケーキも気に入ってくれて嬉しい。」
唯は思わず、はしゃいでしまう。
「! 言葉?」
ふと、言葉の視線を感じた気がして、誠は入口のほうを向く。
・・・が、そこには誰もいない。
「どうしたんですか?」
聞いてきた唯に対し、何でもないです、とだけ答えた。
「どうでもいいけど、口にクリームが付いてますよ。」
苦笑いしながら、誠はティッシュを取り出し、唯の口についたクリームをふき取ってやる。
ティッシュを通じて彼の手のぬくもりが伝わり、唯の鼓動がトクトクと速くなった。
ちょこちょこ羽目は外すのに、ついついスキンシップをかけちゃうのに、彼はにっこりして受け入れてくれる。
なんだか自分より、誠のほうが大人っぽく感じる。
自分より年下なのに、なぜだろう。
「そうそう、ケーキのお勘定はどうしましょう。」
「あ! 全部私が払いますよ。」
おもわず声をあげて、
「で、でも・・・。」
「いえいえ、今回は私が無理して引きとめちゃったみたいだし、せめて物施を・・・。」
話しながらカウンターへ行き、まとめ払いです、とレジの人に声をかけた。
とはいえ、珈琲ほどではないが、ケーキもかなり高い。
2人分払うだけで、今月分の小遣いはなくなってしまった。
「ほんと、すみませんね・・・。」
すまなそうな誠の表情を見て、いえいえ、と首を振る。
「そんなことないです! 伊藤君がうれしいなら、すごく私もうれしいですよ!
こんな・・・こんな気遣いしか出来なくて、ごめんなさい。」
顔を赤らめ、唯は答えた。
喜んでくれただろうか。

唯はいつもの癖で、好意を寄せている人の腕にスキンシップをかける。
日はもうとっくに暮れ、駅の入口からは、黒い闇と一直線にともる電燈が見える。
唯も誠も、肩を並べて歩くこと、触れ合うことにいつの間にか違和感を感じなくなり、恥ずかしいとも思えなくなっていた。
駅の改札口まで、二人は歩いた。
「平沢さん、ありがとう。今日はいい時間が過ごせました。」
「うれしいなあ。 またいつか誘うね! それでは、おやすみなさい!」
後ろを向いた誠を見て、唯は思い出したかのように、
「あ、そうだ! 伊藤君!」
携帯電話を取り出す。
「せっかくだから、メールでもお話しましょうよ。赤外線で私のデータ、送ります。」
「じゃあ、俺も。」
誠はからっと笑って、青い携帯をとりだした。
赤外線送信は携帯を近づけないとできない。
携帯を近づけて、思わずお互いの手の甲が触れ合う。
「あれ、おっかしいなあ・・・。うまく出来ないや。」
「あ、たぶん平沢さんの携帯には背中についているんだと思います。・・・やっぱり。」
「あ、ごめんなさい・・・最近なかなか使わないもので。」
「しょうがないですよ。おまけに送信するときはパスワードを入力しないといけないし、ちょっと腹立ちますよねえ。」
「そうですねえ。」
携帯の赤外線受信部を近づけると、簡単にデータの送受信ができた。

「じゃ、これからもよろしく!」
「待っていてくださいね。学祭の日はベストな曲を聞かせますから!」
そう言って思わず唯は、手を振った。
誠も手を振って返しながら、改札口を通って行った。
弾む気持ちで唯が踵を返すと、目の前に澪がいる。
思わずぽんと顔が赤くなる唯。
「み、澪ちゃん・・・・見てたの・・・?」
澪は思案顔のまま、表情を変えず、
「なるほど、まさか唯、彼氏を作ってたなんて。」
「い、いや、そういうのじゃないよ・・・・。」
うつむいたまま、唯は答えた。
「唯も隅におけないな。あの人に気に入られたくて、練習を張りきってたというわけか。
あの男、以前梓が言っていた人なのか? 彼女のいる、あいつ?」
「ち、違うよ・・・。」
思わず唯は、目を外した。
「だったら、いいけど。考えてみれば、唯もそんな年か。」
澪は半信半疑の表情だったが、これ以上問い詰めるのをやめてくれた。
「それにしても唯、いい顔で笑ってたね。」
「え、そう・・・?」
「うん。私たちとしゃべっている時にも、あんな笑顔しないよ。」
自分でも気づいてなかった。
誠と話している時、今までなかった朗らかな笑顔をしていたことに。
「ひょっとしたらあなたたち、似合うのかもしれないね・・・。」
頬笑みを浮かべながら、澪は言った。
うつむいていた唯の頬が、ゆるんだ。
似合う、かあ・・・。


電車の車窓から、赤々とした紅葉と、黄色い銀杏の並木が見える。
音楽を聴きながら席に座り、唯の屈託ない笑顔を、ぼんやりと誠は思い浮かべていた。
肌のぬくもりや、感触よりも印象深い。
あのいい笑顔。
そして、赤子にも似たきれいな目。
あれを見ていると、癒される。
二股をかけているという罪意識を、一瞬だけ忘れることができる。それに甘えてしまっている、自分も情けないといえば情けないが。
こんな自分に、どうして懐いてくれるんだろう。
でも、そばにいてほしい。
という思いがまた、頭をよぎったとき。
「伊藤!」
強い声で、我に返る。
甘露寺七海が、前に来ていた。
自分より大柄な彼女が、強い剣幕で睨んでいる。
「ああ、びっくりした・・・甘露寺か。」
「びっくりしたじゃねえよ! どういうことだ? 世界がいながら、桜ケ丘の女の子と付き合ってるってのは!!」
「お、おいおい・・・付き合ってるって、そういうわけじゃ。」
「しらばっくれんじゃねえよ!」七海が詰め寄る。「現に駅前の喫茶店で、一緒に食事してたじゃねえか!」
やっぱり見られていたか。
「い、いやねえ・・・。コンビニでよく見かける子なんだけど、喫茶店に誘われて、断れなくて・・・。」
誠があわてていると、
「とにかく、世界にこのこと、知らせたからな。」
と、そっけない七海の返事が返ってくる。
すると誠の携帯から、音のしない振動が伝わってきた。このリズムを考えると、世界からだ。
ぱっと携帯を開けてみると、こんなメッセージが。
『今夜誠の家に行くのはやめた。
どういうこと? 桜ケ丘の女の子と隠れて付き合ってるっての。
七海から聞いたよ。
今日は遅いから、明日じっくり説明してもらうからね。』
案の定、本当に、世界からである。
「ああ・・・。」
これから嵐が起こることを悟り、誠は頭を抱えた。


続く


今回のおまけ
『ベラ・ノッテ』
ディズニー映画『わんわん物語』の主題歌。
ベラ・ノッテとは、イタリア語で『きれいな夜』の意味だとか。
(ちなみに向こうも恋愛物だかんね、本当だかんね)

School Daysバトン

Q1 そもそもSchool Daysは何か知ってますか
A1 最初は全然知らなかったな。 
Q2 知ったきっかけはなんですか
A2 青と赤で、『妖魔』の後番組をYoutubeで探したら、偶然見つかった。
Q3 School Days(以下スクイズ)の印象はどんなのですか
A3 主要人物の我力が強く、ドラマとしてはなかなかおもしろかった。 ハッピーエンドが好きだけど。
Q4 スクイズ内の登場人物でだれが好きですか
A4 刹那。 友達にするならこういうのがいい。
Q5 スクイズ内の登場人物でだれが嫌いですか
A5 ちょっと難しいな。 世界も言葉も、見ているのは嫌いじゃないけど、実際に恋人や友達にはしたくない。
Q6 誠死ね
A6 ここまで不人気な主人公も珍しいな。 ゲームの趣旨が趣旨だからしょうがない気もするが。
Q7 嫁は誰ですか
A7 やっぱり刹那。 七海も嫌いになれない。
Q8 エロゲ版とアニメ版どっちが好きですか
A8 テレビ番かな。
Q9 エロゲやった人にだけ質問します
A9 プレイ動画は幾分か見たことがあったけど。
Q10 最初に攻略したルートは誰のルートですか
A10 いや、やったことがないから無理っす
Q11 Summer Daysはやったことありますか
A11 ないっす。プレイ動画なら見たけど。
Q12 言葉?世界?
A12 どっちもパス。メインヒロインのキャラバランスとしてはこの2人がいいと思うけど。
Q13 刹那は俺の嫁
A13 わかるわかる! ああいうのがいいよね。
Q14 アニメ見た人に聞きます
A14 へい、これで興味を持ったもんね。
Q15 OPで変な妄想しないでください
A15 は・・?
Q16 このアニメの感想は?
A16 ラストに度肝を抜かれたね。 
Q17 鬱になりましたか?
A17 番外編の『Valentine Days』が口直しになったんで、それほどでも。
Q18 もう質問ないんですけど
A18 へい。
Q19 じゃあこれで終わりにします 乙
A19 はい、お疲れ。 宣伝になっちゃうけど、『けいおん!』とのコラボ小説もよろしく!
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【 2011/06/24 23:34 】

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