[藤本隆宏] ブログ村キーワード
轟く砲音(つつおと)、飛来る弾丸(だんがん)。 荒波洗ふ デッキの上に、 闇を貫く 中佐の叫び。 「杉野は何処(いずこ)、杉野は居ずや」。 船内隈なく 尋ぬる三度(みたび)、 呼べど答へず、さがせど見へず、 船は次第に 波間に沈み、 敵弾いよいよあたりに繁し。 今はとボートに 移れる中佐、 飛来る弾丸(たま)に 忽ち失せて、 旅順港外 恨みぞ深き、 軍神廣瀬と その名残れど 文部省唱歌『広瀬中佐』 両国の手違いで起こるはめになった、日露戦争。 ロシアは日本が一方的に攻撃してきたと思いこみ、国際世論はロシアにつくと思っていたようだが・・・。 そううまくはいかないだろうな。 日本と同盟を結んだイギリスにせよ、他の国にせよ、ロシアの力をこの機にそいでおきたいと思っていただろうし。 しかも『他の誰か』がロシアと戦うというのだからなおさらだ。 正岡律や稲生季子はひたすら不安に待つ。 『女は待つのも仕事』という。 だから『君死にたまふことなかれ』のような詩もできるわけだ。 そして連合艦隊は、手始めに旅順の拠点を陥落しようと考えるが・・・。 残念ながらこの地は地形上、守りに強く攻めに弱い仕組み。 敵襲はかなり難しいと言っていい。 後に二〇三高地という言葉と髪形が流行るが、これも接戦に次ぐ接戦だったからであろう。 手始めに奇襲を仕掛けるが、巡洋艦一隻を沈めるだけで終わる。 ま、そう簡単にうまくいくはずがない。 ともあれ、祝賀会の最中に攻めておきながら効果がないのがいささか・・・。 秋山真之の作戦で、ロシア艦隊をうまく乱そうと考えるものの・・・。 その作戦で盟友が死ぬから皮肉である。 広瀬武夫はロシアと深い親交があった。 自分の艦隊に『戦うときは正々堂々と戦おう。しかし、いつか和平を結ぼう』と言うあたりは潔い。 後に軍神とたたえられるだけはあろう。 歌でも有名な杉野兵曾(ちなみに生存説がある) 金銭トラブルが多く、『オコゼ』と呼ばれていたと言うが、その男の清濁を合わせ飲み、慕わせる。 そして最後の最後まで、生死をこの目で確かめ、助けようとする。 やはり明治時代においては、武人の鑑だったかもしれない。 脱出するとき、一瞬恋人・アリアズナとの思い出が浮かぶ。 最後の最後で広瀬は、自分の死を予期していたのかもしれない。 ある意味では・・・違うかもしれないが・・・走馬灯と言えるだろう。 そして、弾丸をまともに食らい、肉片一片を残して海の藻屑と消える。 36歳。 ペンダントが海中に落ちていくシーンが切なかった。 その遺体はロシア兵によって発見され、ロシア正教会の儀式で弔われたという。 たとえ敵味方であっても、たとえ奇襲を受けたとしても、よき好敵手としてお互いに認めていたと言ったところか。 同時に当時のロシアもまた、ボリスを始めよき武人が多かったということでもある。 ロシア革命後にどうなったかはわからないが・・・・。アリアズナもボリスも、複雑な思いだったに違いない。 真之は広瀬の訃を聞き、ひたすらに顔を洗う。 広瀬との思い出が走馬灯のように駆け巡りつつも、必死に前を向く。 ここからバルチック艦隊を全滅出来る作戦が浮かび上がるわけだ。 こういうシナリオは面白いと思う。 それを兄は、妻は、友人はどう見るのか。 来年が楽しみである。 今回のおまけ 藤本隆宏 『stand alone』 藤本隆宏は広瀬武夫を演じた人。 案外うまいかも。
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