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小説『函館百景』 その2
函館百景、その2.

クロバラはライト系、銀魂と同じくティーン向けなのに対し、(けいおんやSchool Daysを知らない人にもわかりやすくした・・・つもりなんだけど)
こちらは一応硬派で純文学小説を狙ってるんだけどね。まだまだ写真で読者寄せを感じている感が否めないか。
構想は大体出来上がっているんだけど、どうも淡々とした感が否めないのな。
そろそろ盛り上がる場面を作らにゃあね。

函館山が一番盛り上がりそうなんだけどさ。
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函館駅のプラットホームから駅構内に入ると、
『きのうの敵はあすの友 箱館解放 1868年』
と書かれたモニュメントが目に入った。

ちょっと気に入らなかった。
その陰で土方歳三が死んでいったのだから。『新撰組!』『燃えよ剣』を見て以来、僕は土方のファンになっている。理想の人物像も彼である。
長い廊下を歩み、汗ばんできた額を拭いて改札口を出ると、青い空の下、ロータリーに出た。
函館駅 外
伸びやかであった。
北海道らしかった。
少し不満げだった気持ちも、和らいだ。
提灯を吊るしているあたりを考えると、駅前でビアガーデンでもやるのだろう。実際は結局、行けなかったが。旅の身の上、あまり酒は飲めない。
泊まるホテルは駅を出てすぐ左手にあった。
函館駅 ホテル前
リュックが重いので、荷物をホテルの窓口に預ける。
チェックインはまだで、部屋には入れない。少しロビーをぶらついてみる。
右に曲がって細い道に入ると、パソコンが二台置いてある。無料で使えるので、ちょっと自分のブログをのぞいてみた。
隣のパソコンを見ると、眼鏡をかけた丸坊主の男性がパソコンを使っている。ディスプレイには漢字ばかりで、平仮名がほとんどない文章が羅列していた。中国語と思われる。
函館は最近、外国人客に人気があるという。
やはりこの人も観光客なのだろうか。
まだまだ日本観光は捨てたもんではないかもしれぬ。
もっとも、それは自分が様々な外国に行ってから言うべきなのだろうが。
黄色い消火器

蒸し暑い、というほどではないが、暑い中を歩くのにはこたえた。ホント、自分の住むところと変わらない。
今日中に元町はなるべく征服したい。
そう思って、路面電車の1日券を購入し、函館駅前を通る路面電車に乗る。
五稜郭は明日に行くことにしていたので、そこからJR五稜郭駅までバスがあるかどうかも聞いてみた。そのまま五稜郭駅を出発して、札幌に行く予定だった。
一応あるというが、本数は少ない。正午には通っていないという。
とりあえず、五稜郭に行ってから考えることにして、券を受け取った。
路面電車は道路交通の妨げになるということで、一時は縮小・廃止の一途をたどったが、ヨーロッパでは二酸化炭素をあまり生み出さない交通機関ということで見直されてきているという。北海道でもそうなのだろうか。
プラットホームは鉄道というより、道路の真ん中に位置するバス停という感じで、バスと認識してもいいような気がした。
やがて電車が来たので、乗って見る。
入口で整理券を受け取り、降りるときにはボタンを押し、勘定を支払う。
このあたりもバスに似ている。
乗り心地もバスのようであった。
ただ、席は向い合せで、電車に似ているが。
昼時ということで、少し混みそうなものだったが、中は数人しかおらず、楽々と座れた。
旅行誌るるぶをめくり、いい料理が食べられそうなところを探す。魚介類は当たり外れが大きい。肉系がいいとおもいつつ、一つの店の情報が目に留まる。
『バーガーショップ ピエロ』
ハンバーガーではあるが、ここの地の店であるし、悪くはないかもしれない。
軽く食べるか。

末広町で降りて、北島三郎記念館入口で少し休む。
とはいっても、なんだか行く気がしなかった。
幼いころ聞いたのは吉幾三の歌ばかりで、サブちゃんの歌にはなじみがなかった。それに函館にはちょっと合わない。それもあったかもしれない。
潮風に吹かれたくて、外に出て港を眺め見る。
函館元町 波止場
風は全くない、無風状態だった。
でも、景色はなかなか綺麗だった。
海がご無沙汰だったからだろう。
黒い海の上に、白い客船が通る。松島でも、千葉海浜公園でも、南房総和田浦でも、この光景は見たことがなかった。そのまま船を追いかけるように港を横切り、赤い煉瓦の建物へ。
赤レンガ倉庫群である。
函館赤レンガ倉庫群
以前見学した、ニッカウヰスキー工場に似ていた。

暑さを避けるため、レンガの中に入る。
ちょうどお土産処といった感じで、イカの干したもの、ワイン、ラーメンなど、函館の土産としてはそれなりに名の知れたものが置かれていた。冷蔵庫から出る冷たい空気が、涼しい。
日本人から金髪の男女まで、様々なお客が歩き回る。江戸末期に開国してから今日まで、多国籍が似合う港町というイメージは変わっていない気がした。
ワインの試飲コーナーがあったので、白ワインを一杯飲んでみた。多少アルコールの刺激があるものの、口当たりはいい。甘くて、グイっと飲むことができた。
甘すぎて、多少のども渇いてしまったが。

腹がすいたのと、のどが渇いたのとで、いったん外に出て、ピエロを探す。
が、お昼時であったということもあり、混んでいた。
8人ほど若い男女が、入口でたむろしていることを考えると、結構混んでいるだろう。案の定、30分くらいは待たされるという。
あきらめて隣の店で、エスカロップを食べることにした。
その店はレストランというより、喫茶店に近い。やはりお昼時で、家族連れが4組ほど座り、あいている席は真ん中のところしかなかった。
迷わずるるぶにも紹介されていたエスカロップを注文する。
これは注文して正解だったと思う。夜の十時まで何も食べなかったが、そんなに腹も減らなかった。
できるまでに20分ほど待たされた。
カメラをもう少し使いこなせたほうがいいと思い、周りの額縁や、窓を撮っていく。
昼食場所
エスカロップは、ウインナーだけ熱いという感じで、ミートソースは解凍したものらしく、妙にぬるく、ぬるぬるしていた。それでも口当たりは良く、一口食べたら止まらなくなっていた。
30分弱で完食した。
エスカロップ


そしてまた、赤レンガ倉庫へ戻る。
エスカロップの味が濃く、少しのどが渇いた。
持ってきたCCレモンの残りを飲み干す。炭酸の抜けたCCレモンほどまずいものはないが。
暑さで頭がぼんやりした状態で、お土産処に入った。
お土産処で一番長い時間を費やしたのは、ガラスを売っている場所。そこには様々なグラスが置かれていた。
鉢型のグラスが多いが、ワインを入れるのに使うつづみ型、長身の型もある。どのグラスも蛍光灯の光に反射して、七色に見える。あまりワイングラスはおいてほしくなかったが。下手に取り上げると壊れてしまう。
『アイヌ仕様グラス』が気になった。自分の目線よりも高い棚から、一つとってみる。
アイヌグラス
アイヌ人は昔から、狩猟や採集で生計を立ててきたといわれている。大方この模様は海沿いに住み、魚を主食としてきたアイヌ人が生み出していったものなのだろう。曲線の文様がアンモナイト、さらには波を思い出す。やはりどこの文化でも、渦状、波を思わせる曲線が美しいと感じるのだろうか。
人間の美意識は結構面白い。大体あまり変わらない。
トポロジーは人間の美意識を追求するためにもあるのかもしれない。
ぼやけた意識も、ようやくはっきりしてきていた。

肩掛けがグラスにぶつからないようにしながら、グラス売り場を後にする。奥のほうにすすんでいくと、檜の部屋にスルメイカが置かれていた。
茶色い。
あまりこの函館という土地には似合わない気もした。昔からイカ漁が盛んであるのは分かっていたが。少なくともイカは白い身のまま刺身にして食べるに限る。
その隣に、『イカール星人』と呼ばれるグッズのフィギュアがある。のちに札幌で見たマスコット『イラックマ』に似たご当地マスコットといった感じか。
イカール星人

イラックマ 札幌


ぎょろ目で茶色く、黒いまだら模様がついている。
ご当地ヒーローでは、イカはイカール星人として悪役のポジになっているようだが。戦隊ヒーローではなく、ウルトラ警備隊のような軍団の宿敵である。
タコに比べるとイカは、人々にあまり親近感を与えていないような気がする。
タコは日本人にとってはユーモラスで、『蛸薬師』というタコの神様も存在する。一時期「火星人はタコのようだった」という噂が流れたこともある。西洋人にとってはクモと並んで気持ち悪い生き物の代表らしく、『devilfish』の異名を持つ。ギリシャ神話でも『クラーケン』というタコの化け物がいる。
それに比べてイカはなぜ、人々に印象を与えなかったのか。体が白いのと、割としっかりした胴体をもち、規則的に足を動かすからだったからだろうか。タコは不規則に動く。
函館で『不規則な』悪役を見たような気分である。それでも結構全国で話題になっていたらしく、朝日新聞では特集を組んでいたようだ。記事のスクラップを読んでみると、この悪役は妙に人気が高い。
昔からインパクトの強い悪役は、主人公以上の人気を博するといわれている。このイカール星人、ばいきんまんやフリーザ程とはいかぬとも、インパクトはそれなりにあるらしい。

外に出てみる。
結婚式場を通り過ぎる。
また頭がぼんやりとする。
船の波止場を横切り、そこから赤レンガ倉庫、そして函館山をのぞき見する。
函館山

夜になったら、函館山の景色を楽しもう、と思った。
その時間まで、思いっきり元町を楽しもう。車が激しく往来するが、それも悪くはないではないか。鈍角の函館山と、4本ほど生えている展望台の鋭角な電柱を仰ぎ見る。太ったトトロに似ていた。


続く


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テーマ:北海道旅行 - ジャンル:旅行

【 2011/09/20 21:13 】

| 小説『函館百景』 | コメント(0) | トラックバック(0) |
小説『函館百景』その1 ~函館旅行記~
休みを利用して、北海道に行ってきた僕。
せっかくだから、これを小説風に書いてみようと思っている。
たまには硬派な小説にも挑戦したいと、前々から思っていた。
夏目漱石の『倫敦塔』や太宰治の『富嶽百景』に少しでも近づければ、と思っています。
Cross Ballade(筆者は『クロバラ』と略してます)』どどちらが人気(アクセス数が多い)かな?

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『きったぜ、きたぜ、はーこだーてへー』
そんな歌を昔聴いたことがあると家族に打ち明けると、答えはこうだった。
「アラレちゃんとサブちゃんがごっちゃになってる」
まあ、北島三郎のみならず、多くの人々にとって、函館は憧れの地なのだろう。
僕は皆といるより、一人でいるほうが楽しめるタイプ。
本来なら家族旅行になるはずだった北海道旅行を、無理を言って一人旅にしてもらった。
親不孝極まりないが、そうでないと自身が楽しめず、道中不安定になりそうだったから仕方がない。
元々情緒不安定になりやすい性格。短い休みの期間、危険因子をなるべく除いたほうが楽しめる。
そう思ったのである。

当然、旅行の企画も自分一人で立てることになった。
元町、函館山、五稜郭は完全征服。
様々な情報誌を見て、そう思うようになっていった。この3つのスポットが、華のある場所だと、今でも思っている。特に函館山からの景色は、写真に撮る価値があろう。
三脚を持って行ったほうがいいが。
ホテルは安さに惹かれて、函館駅前の安いビジネスホテル(朝食つき)にした。
見知らぬ景色を見て、写真を撮れれば、雑魚寝でも構わなかった。
ところが旅行直前になって、元町と五稜郭が函館駅を挟んで反対側だと知り、少し狼狽した。予約をキャンセルすればキャンセル料を取られてしまう。
結局そのホテルにした。

ホテルを予約したあたりから、函館旅行をテーマに小説を書きたいと思うようになっていった。
いつまでもライト・二次創作系の小説ばかりでは進歩がない。
夏目漱石の『倫敦塔』や、太宰治の『富嶽百景』を目標に、旅行をテーマにした硬派小説。
書けたらどんな気分だろうか。
函館までの道中は、刮目して車窓や景色を眺めたほうがいいと思うようになった。

出発の日は涼しく、霧深かった。
出発の日は、家族が駅まで送ってくれた。
駅の構内に入ると、殺風景なプラットホームが目に入った。
出発駅
先の大地震で釣り天井が落下し、ボロボロになった写真を僕も見たことあるが、その面影が見られないほどに修復されている。
釣り天井で或るところは変わっていないようだが。
また地震があったら、ぐちゃぐちゃになりそうである。
乗る新幹線は、車体にポケモンの絵を携えて待機していた。
新幹線
JRも洒落たことをする。
乗り心地は、研修のため東京に行った時と変わっていない。
ふかふか感もあまり変わらないが、今回は新幹線が出発する直前、妙に息苦しくなったのを覚えている。
ちょっとわからないが、家族を連れてこなかった罪悪感か、旅行が始まることによる『産みの苦しみ』か、
いやいや、単に霧深かったせいか。
理由はよくわからないが、僕は妙な鬱を抱えつつ、街を出発した。

家族の勧めで買ったデジイチカメラは、今回の旅で初陣ということになり、旅行期間中ずっと首にかけ、撮影体勢に入ることになった。
コンパクトカメラとは違い、かなり重い。
小学生の時に使った、鉛分銅を首にぶら下げるような感じで、ホテルに行った時にはすっかり首がこってしまっていた。
本当は年季の入ったコンパクトデジカメもあったが、充電してもすぐ切れてしまうほどバッテリーが老朽化してしまっていた。
加えて、ぼかし等を入れ、本格的な撮影を楽しめるのがいい。
そう勧められたのである。
新幹線の車窓から、いちいちふたを開けたり閉めたりして、写真を撮ったりしていったが、そのうち面倒くさくなり、カメラのふたをポケットに入れて車窓を取るようになった(ふたは旅行中、どこかに行ってしまった)。
とは言え、霧が深く、車窓から見る風景はあまり期待できるものではない。
焦点を合わせる場所を選択できるから、狙いを定めた風景を綺麗に撮れるカメラであったが。
車窓(古川付近)
乗る前に自販機でCCレモンを買ったのはよかったと思っている。
喉越しがいいし、電車の中で買うと高いのである。
集中すると喉が渇くものだ。
霧深い車窓が晴れてきたのは、花巻あたりに入ってから。
車窓(花巻付近)
これから綺麗な写真が、いくらでも撮れる。
車窓(盛岡付近)
これから、
というときに、盛岡あたりを過ぎたあたりで、僕は白河夜船をこいでいた。
車窓を刮目して見る。という思いはどこへやら。
それとも、前日の寝付きが悪かったのか。
いつも、いくら寝てもね足りないのである。

目を覚ましたのは、終点の新青森駅近く。
あまり変わらぬ田園風景が続いているが、とりあえず到着した。
新青森駅
新青森から函館まで向かう特急は、緑色のひたち、という感じの電車であった。
指定席が禁煙席だったのでタバコ臭い、ということもなかったが、左側の窓際の席で合ったのは、後で振り返るとちょっと残念だった気がする。
海は右手にあるのである。
この特急は一風変わっていて、新青森を出発してから、いったん反対方向を進んで青森駅に到着した後、函館駅に向かうのである。
なかなか世界は広いものだ。
青森駅周辺もなかなか開けた場所で、サラリーマンや家族連れ、20人くらいの人が函館を目指してこの特急に乗ることになった。
一風変わった絵柄を持つデパートの方が、妙に印象深かったが。
青森駅付近 ビル

青函トンネル前後の車窓は、大いに期待にしていた。
青函トンネルの構図

期待はずれであった。
地味。あまりにも地味。
見慣れた田園風景を両脇に挟んだと思ったら、すぐトンネルに入ってしまう。
以前家族と一緒に行った、袖ヶ浦アクアラインとはけた違いに地味。
アクアラインは両脇に海を挟んだ道を通り、豪華客船をあしらったかのようなパーキングエリアを通りすぎて、トンネルに入る。
青函トンネルは中に入っても、暗い壁ばかりで、これといった特徴がなかった。
撮るに撮れない。
トンネルの中の竜飛海底駅も薄暗い。
降りても見るところがあるのかどうか。

トンネルから出ても、北海道に入ったという気がわかない。
畑に囲まれて一戸建てや工場が続くという、新幹線の車窓によくある風景がだらだらと続いていた。
青函トンネルから出た直後の車窓
指定席の車両だが、右側の席はがら空きだったので移動すると、やっと海が見えてきた。
函館付近の車窓。

ようやく、別世界に、北海道に来たという気がしてきた。
函館は港町。
海が見えた方がそれらしい。
『北海道らしさ』はないものの、『港町らしさ』は実感できる車窓。
やっと函館らしくなってきた、といえた。
函館付近の車窓2


そうこうする間に
『間もなく、終点函館です』
というアナウンスが流れてきた。

何となく東北の駅とは違う作り。
やはり北海道には北海道らしい駅がひつようなのだろう。
ちょうどコの字型にプラットホームが作られていた。
海を横にして走った列車らしい漢字はしていた。
とはいっても、JR函館駅の近くに海はない。
駅ビルやデパートなど、それなりに発展した町という気がしたが、それだけでは普通の都市で、個性はない。
しかも、避暑も兼ねて北海道に来たのに、汗をかくほど蒸し暑い。
その日の最高気温は29度だったという。

函館の個性を感じられないまま、僕は函館駅のホームに足を踏み入れた。
函館特急


続く。


今回のおまけ
ハコダテ観光ガイド イカール星人襲来中①「新鮮!イカール星人現る!」
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【 2011/08/17 00:48 】

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